大工たちの
「伝えていく技と想い」
大工たちの作業場
社長を退任し、若手大工の指導に専念するようになった良三。しかしなぜか朝の作業場に顔を出すのは控えるようになった。じつは、良三の気合声のすさまじさに縮み上がった新入り大工が、仕事場に道具を忘れて行ってしまうという失態があったのだ。「いまの若いモンは・・・」とぶつぶつ言うこともなく、すっぱり身を引くあたり、やはり男らしい良三である。
良三に代わって現場の要となる辰成は、黙っていても職人としての心構えがその立ち姿ににじみ出て、周囲の空気が引締まる。脇を固める吉田友也、入江亘の中堅陣も迫力十分。それをベテランの安秋夫や鈴木秀雄が穏やかに見守っている。
・・・と、そこに良三が現れたと思ったら、猛烈な勢いで若手の指導をし始めた。
「そうじゃねえだろ、よく見ろ馬鹿野郎!」。
響き渡る大声。それを合図のように空がみるみる黒くなったと思ったら、たちまち大雨になり、雷鳴まで轟き始めた。ついに本物の雷まで呼ぶようになったカミナリ親父に、「嘘だろ?!」青ざめる大工たち。その親父が立ち去った後、何事もなかったかのように晴れ上がったことは言うまでもない。
(編集部注:ここに挙げた天候に関する記載は、2014年5月9日午後に千葉県柏市布施周辺で実際に起こったことです)
マミです。お久しぶりです。水戸工務店の大工の一人・吉田友也と結婚して今では美海、悠真という2人の子供の母親になりました。大工は続けたかったけれど、子供をしっかり育てるのがいまの私の大切な役目。当分は日曜大工で居ようと思います。
2014年、自宅を建てさせていただくことになり、涼温換気の家を夫が自身の手で建てました。現場で後輩のワタル(入江亘)が腕を上げているのに驚きました。腕だけではなく態度も大人びて、目配り・気配りもよく出来ていて頼もしく思いました。
そして改めて、私もじつの娘のように、この工務店で育てられてきたのだなあと感じたのです。うちの子たちも水戸ファミリーの一員として、皆さんに可愛がっていただいています。こんな大家族ってほかにはないですよね?それでは、大工さんたちからもひと言!
吉田真美
平成16年、大工育成塾2期生として入塾し、水戸工務店に修行で来る。
3年間の大工育成塾カリキュラム終了後、平成19年に水戸工務店に入社。平成21年、同じく水戸工務店大工、吉田友也と結婚、妊娠を機に休職中。
「みんな順調に成長していて、私は安心して見守っています。棟梁はまだまだ元気。後進を育てることに専念できるからかえって精神的にも良いんじゃないのかな。あの怒鳴り声を聞くと私たちも気合が入ります」
「子供の頃から家づくりが好きでこの道に入りましたが、気がつけばもう33年、水戸工務店でお世話になっています。それでもまだまだ難しいことが多く、現場では気を抜けません」
「自分の家を自分で建てさせてもらって、お客さまの気持ちや、他の職人さんがどういう風に考えて仕事をしているかが、より鮮明になりました。この経験をこれからの仕事に生かしていきたいと思っています」
「6年間の修行では、替えの効かない材料を刻む怖さや緊張感、先を読んで仕事をすることの大切さを経験しました。2016年に年期明けし、お客さまの気持ちを考える家づくりをしていきたいと思います」
「大工塾出身です。今まで怒られたことがなかったので、修行中、怒られることに最初はショックを受けました。でも小さい頃からなりたかった職業なので、いまでは頑張って良かったと思います。お蔭で、次に何をすればよいかが自然にわかるように鍛えられました。2018年に年期明けし、丁寧な仕事でお客様に喜ばれる家づくりをしていきたいと思います」
「水戸工務店のことは自分で調べて、募集はしていませんでしたが頼み込んで採ってもらいました。散々叱られても続けられた理由はよくわかりませんが、続けていて良かったことだけははっきりしています。ここは厳しいけれど、あたたかい場所です」
「保育園に行く前から父のようになりたいと思っていました。親子なので厳しくされることは覚悟していましたが、想像以上かも・・・。でも祖父が興した会社を潰したくない、自分も何か力になりたいというのは正直な気持ちです。結婚も家業を手伝ってくれる人としたいと思っています」